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わかっていたけど。
それにしても烏口腕筋なんてニッチな部分に興奮するのはこの人くらいだろうな。
電話しながら隣を歩く貫一さんを見下ろす。
暑さで額が汗ばんでいる。
その汗を舐め取ってはいけませんか。
「ところで智くん、約束どおり例の話を蒔彦に伝えておいたから、おそらく来年の初めには実現すると思うよ。もちろん僕もできるかぎり尽力するからね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「ああ。練習で忙しいだろうが、時間があればうちに来なさい。吉田さんも一緒に」
「……わかりました。時間があれば、そうします」
しないけど。
俺はともかく、貫一さんは絶対に連れて行かない。
なぜなら、父さんのプライベートテリトリーに入った男は、必ずなんだかんだと理由をつけて裸に剥かれ、筋肉チェックをされてしまうからだ。貫一さんを父さんの筋肉欲の餌食になんてさせない。
……ん? 裸に剥いて……?
……帰ろうかな。
いやいやいや、ダメだ。貫一さんの裸を俺以外に見せるなんてありえない。……俺も、見れないかもしれないけど。
電話を切ると、スーパーはもう目の前だった。
そこでふと思いついたことを口にする。
「……貫一さん、日本チャンピオンになったお礼に、プレゼントをあげます」
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