再戦

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買い物を終えてスーパーを出たところで、貫一さんが「少し遠回りして帰ろう」と言い出した。 「いいですよ」と答え、ビニール袋を揺らしてぶらぶら歩く。 なんとなく足がロードワークの道順を辿り、海辺の公園に到着した。 むし暑いが、空はどんよりと曇っていて日差しはない。防風林の木立の間からモノクロームの水平線が見える。   この公園は、公園とは名ばかりに遊具もなく、空き地にベンチが置いてあるだけの殺風景な場所なので、普段からひっそりとしている。そのうえ天気が悪いとくれば案の定、他に人はいなかった。 「ちょっと休憩するか」 ベンチに並んで腰かける。 心なしか、貫一さんの距離が近い。 ドキドキしていると肩が触れた。 海風になぶられて騒ぐ防風林の枝葉のように、俺の心もザワザワ揺れる。 貫一さん、貫一さん……ッ! それまで必死に我慢していたものが、とうとう我慢できなくなった。 息を整え、意を決して切り出す。 「……あの、貫一さん」
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