再戦

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「ん?」 「お願いがあるんですけど」 「何だ?」 「貫一さんを膝に抱きたいです」 貫一さんはたっぷり沈黙したあと、ジト目で俺を見た。 「……俺は重いぞ。膝の命とひきかえにしてもそれを望むのか」 「俺は脚で100キロのバーベルを上げられる男です」 口をつぐんだ貫一さんに、さぁ、と両手を広げて促すと、渋々といったていで膝先にちょこんと座ってくれた。 まさか本当に座ってくれるとは思わなかった。 これだけでも嬉しいが、もうちょっと押せばさらなる幸せに近づけそうな気がする。 「そっち向きじゃなくて、こっち向いて俺の腿を跨いで座ってください」 「……勘弁しろよ。こんなとこで」
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