再戦

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「……なぁ、智典……その、き、キス、……しないのか?」 「え?」 思いがけない言葉に驚いて貫一さんを見ると、彼は真っ赤になって俺から視線を逸らした。 「……日本で一番になったらキスするって、約束しただろ……」 「……して、いいんですか?」 みっともなく声が震えた。 貫一さんはうつむいて羞恥をこらえるように、 「約束、だから……」 狂喜しかけた胸が、ツキン……と痛んだ。 ああ……本当にこのひとは、律儀なひとだ。 誠実で、真面目で、頑張り屋な貫一さん。 あなたは、本心では嫌なのに、我慢して約束を果たそうとしてくれる。 ……ごめんね、困らせて。 「……いいよ」
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