再戦

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こくっと頷くその顔が、あまりに可愛くて、……もう、我慢できない。 ずるいのはわかっている。 彼の誠実さにつけこんでいる俺は、最低な男だ。 でも、キスだけ、 どうか、キスだけ許してほしい……。 ゆっくりと顔を近づけると、貫一さんが静かに瞼を閉じた。 その唇に、そっと、触れるように唇を重ねる。 乾燥ぎみのガサついた質感。 まばらな口髭がちくちく当たる。 鼻で息をすると、中年男特有の体臭が鼻腔に入り込んでくる。 普通なら萎えるだろうそれらの要素が、だが貫一さんのものであるというだけで、俺には極上の興奮材料になる。 、 貫一さん……! 念願の貫一さんとのキスは、信じられないほど俺の心を満たした。この体を構成する細胞が、末端に至るまで活性化していくのを感じた。 永遠にこうしていたいと願ったけれど、やがて熱は離れた。 あ……
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