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「俺は何もしてない。お前は自分で勝手に育ったんだ。最初から身体能力も適応力もずば抜けてたしな。……才能ってやつが、あったんだ。
……でも、才能だけじゃない。ポテンシャルがいくらあったって、伸ばそうとしなければ無いのと同じだ。お前は努力してきた。人の何倍も努力してきた。だから勝てたんだ」
「俺が頑張れたのは、貫一さんがいたからです。貫一さんが俺を伸ばしてくれたんです。あなたは、すごい人なんですよ」
貫一さんは困ったように小さく笑った。
「……まぁ一応、お前に初黒星をつけたのは俺だからな。って言ってもあれは試合じゃないし、お前はど素人だったけど」
ちょっとおどけたように言って、思い出したのか愉快そうに肩を揺らした。
そして太眉をめいっぱい下げて、まぶしそうに目を細め、俺の頭を撫でてくる。
「ほんと強くなったなぁお前。今は、どう逆立ちしても勝てないな」
じんわりと温かいその笑顔に、腰砕けになる。
勝てないのは、俺だよ。
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