再戦

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貫一さんは体を起こし、俺の膝から降りた。 「帰るぞ」 そう言って、ビニール袋を手にして歩き出す。 俺もすぐに立ち上がり、足早に彼の隣に行ってビニール袋を片方持った。 そして彼の空いた手に、さりげなく片手を伸ばしかけた……が、寸前でやめた。 ……これ以上彼に触れると、自分を抑えられなくなりそうだ。 夕暮れが迫り、鳥たちが帰巣していく。 強まった海風に木々の葉が激しく揺れ、波の音と重奏している。 体の中から潮騒が聞こえる。 寄せては返して、うるさいくらいに叫んでる。 あなたも、そうであればいいのに。
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