ハートブレイクショット

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練習生が入ったとしても、彼らからの会費だけではジムの運営もままならない。 智典の日本タイトル戦のファイトマネーが入りはしたものの、挑戦者の立場だったので契約金は低く、勝ったからといって増額はされないので、日本チャンピオンになっても貰えたのは50万弱だった。ジムが受け取れるのはそのうち3割と規定されている。 StormRatの興行だったので、オプション(興行収益)などのプラスアルファも勿論ない。 そんなわけで、俺は今でも毎晩のように警備員のバイトに行っている。 楠木さんに頼めば資金援助してもらえるだろうが、これ以上智典の親御さんに頼るのは心苦しい。 こんな状態では、専属トレーナーにまともな給料を払えはしない。 恥をしのんでそう言うと、長浜はフン、と鼻を鳴らした。 「給料は俺持ちにしてやる。……うちのジム建てたとき、お前に悪いことしちまったし、その罪滅ぼしだ」 「長浜……」 そこまで甘えていいのかと迷ったが、これまでも何だかんだ言いつつ困ったときに試合を組んでもらったし、公開スパーリングでも三輪くんを貸してもらったので、今更だと思い直した。 「わるい、恩に着る。給料出せるようになったら、ちゃんと俺が払うから。それまで甘えさせてくれ」 「甘え……お、おう! 甘えろ甘えろ! ベタベタに甘えてこい!」
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