be my last

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 きみの指先が僕の服の先を掴む。  離したら永久の別れと知っているかのように。  無くしたらもう二度と戻らないと知っているかのように。  「鷹山。」  「やだよ」  きみは目を開いて大きな目で涙に満ちた目で僕を見る。  それは小さな子供みたい。  「おいてかないで」  唇が震え、僕まで泣きそうになる。  きみを傷付けて、突き放して、それで別れられたらどれだけよかったんだろう。  もう散々に僕らは傷付いて、苦しくなって悶えて息も出来なくなって。  これ以上きみを傷付けたくない。  傷付けたくないし、  ねぇ。  理解なんて出来ないよね。  僕が死んでしまうことも、今言ったって、忘れてしまうよね。  「おいてかないでよ」  溢れ出す涙を止める術なんて僕は持たない。  持ってない。  「鷹山」  自己愛の塊でしかない僕はきみにたった3時間嫌われることさえ怖くて、その両頬を掌で包む。  きみはしゃくりまじりに安堵した溜息を吐く。  「君が好きだよ。誰よりも愛してる」  擦り寄る頬の感触。震える唇の色。  「鷹山。君の記憶は3時間しか持たない」  伏せた目を覗き込めば、君は怖ず怖ずと視線を上げる。  「多分それで君はこの先、いろんな不都合にあう」  ひくと、君は肩を震わせた。  「今の俺は君を救えない。」  ころころときみの頬を涙が落ちていく。  「俺は君を救えるようになるまで頑張るよ」  僕はできるだけ優しく笑った。
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