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彼は自分の口からぽろっとこぼした呟きは綺麗に忘れ去ったらしく、熱心にわたしを説き伏せた。
「さっき描かせてもらってる時。膝下は見せてもらったけど、すごく細くて綺麗な足首だったよ。思うにふくらはぎとか全体が細いから、相対的に細さが強調されないって感じるだけなんじゃないかな。どうやったって骨より細くはならないからね。…あ、ごめん。なんか、君の脚のこと。…既に断りもなくじろじろ見てたみたいで」
「いえ、あの。さっきはモデルしてたわけですから。どこでも好きなとこ好きなように見て大丈夫なんですよ」
わたしは少し余裕が出て笑った。向こうのどぎまぎ振りに、なんだか変な萎縮した気持ちが解けていくみたい。
彼はやや耳を赤く染めながら珍しく語勢を強めて言葉を重ねた。
「女の人にこんな。…脚全体を見せてくれとか、胸の自然な形を見たいとか。ほんとに失礼だし嫌だって感じるだろうなってわかってるんだ。でもやっぱり、この綺麗なフォルムをきちんと自分のものにしたい。この手で再現してみたいんだよ。すごくわがままで、自己中心的な欲求だって自覚はあるんだけど」
この人、こんな表情見せることもあるんだな。普段はむしろ血の気がないのに、今は薄っすらと紅潮したその頬をぼんやりと見やってわたしは密かに考えた。
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