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同年代の男の子から自分のことを全くそんな目で見たこともないしこれからも絶対ない、って面と向かってはっきり言われるのってやっぱり複雑な気持ちだ。自分だって彼とどうにかなる気なんか全然ないのに。我ながら意味がわからない。
なけなしの無意味なプライドがぱきっ、と。…まぁ、そんなもの毛ほども役には立たないんだから。ばっきり折れても別にどうってことはないが。
あの場で爆弾をぶちまけたあと、話はついたとばかり平然としているエニシダさんに対して青山くんはすぐに納得して矛を収めたわけではなかった。
「あのですね。女性にとって、男性から生殖行動を仕掛けられることだけが脅威ってわけじゃないんですよ。妊娠させなければいいんだ、なんて考えでいられたら困ります。単に身体を触られたり馴れ馴れしくべたべたされるだけだって当然耐えがたく不快なんですよ。だいいちそれだったら避妊ちゃんとしたから最後までしてもいいだろ、ってことになるんですか?」
腹に据えかねる、とばかりに語気を強めて詰め寄る青山くん。エニシダさんは微塵も動じることなく、落ち着き払って首を横に振った。
「そういう意味ではないです。妊娠させるさせないに関わらず、生物としての生殖活動に興味がないんですよ。自分の遺伝子を後世に伝える気はありません。だから、性的な行動も取りません」
「そこが。…どうしてそうなるのかわからない」
青山くんはちょっと苦虫を噛み潰したように不機嫌に呟く。
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