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「子孫を残す気がないこととセックスすることは全然矛盾しないでしょ。てか、むしろ自分の子を産んでもらうつもりでする機会の方が断然少ないのが普通だと思うけど。だって、避妊してやることの方が多いでしょ、現実には?そういう目的でするって意識のある人、そんなにいないと思いますよ」
その台詞にエニシダさんはきょとんとイノセントな透き通った瞳を見張った。
「え、そうですか?だって、繁殖するためじゃなきゃ、何のためにそんなことするんですか?どんな動物だって無駄に生殖行動は取らないですよね。人間だけですよ、無駄撃ちするの。エネルギー効率悪いことこの上ないですよね」
無駄撃ち。…まあ、言いたいことは。わからなくもないけど。
青山くんは弱り切ってごもごもと不明瞭に説明する。
「そこは。…人間はやっぱり、動物の中でも。だいぶ本能が壊れてますから。だいいち受胎するためだけなら発情期がないとおかしいですからね。一年中のべつ幕なしに発情してる生物だから。女性が受胎可能なタイミングかどうかもわからなくても無駄は承知で沢山撃つしかないし。…そこは他の生き物と事情が違うのは致し方ないんじゃないですかね」
「ふぅん、不便なものなんですね」
まるで他人事。説明を受けて一応頷くといった様子、自身の身の上のことって感覚ゼロだ。もしかしてこのひとほんとは人類じゃないのかも。…妖精か何か?
彼は青山くんの解説に心を動かされた気配もなく、晴れ晴れとした声で言い切った。
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