第1話 序章

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遡ること数時間前。 窓から朝日が差し込み部屋には影ができる。 通勤、通学には早いが俺は起きて準備をし始める。 まだ夏が始まる前だというのにパジャマの首元が汗でびっしょりと濡れていた。パタパタと首元に空気を入れてみるが少し涼しいだけで暑い。 「あつーー。それにベタベタして気持ち悪い。まだ6月なのに」 汗でベタベタして気持ち悪かったので愚痴をこぼしながらさっさと着替える。 そして部屋のカーテンを開けた後にリビングに行きテレビをつけ、朝のニュース番組に耳を傾けながら台所に行きコーヒーを淹れるためのお湯を沸かす。その間に朝ごはんとお弁当の用意だ。 フライパンの上に卵を割り、その横にベーコンを焼く。焼いている間、パンをセットする。フライパンからはいい匂いが漂ってくる。この一通りの動作はもう習慣化して慣れたものだ。 俺、葵 日向は20歳、フリーターだ。毎日アルバイトと家の往復生活をしている。 周りのみんなは皆大学生であり、本当なら俺も大学生になりたかった。 しかし、俺には無理だったのだ。なぜなら両親は自分が小学生の時に離婚して母は家を出て行き父の方に引きとられたがその父も俺が高校生の時に蒸発した。 俺と4つ下の弟を残して。 そのために俺は弟の学費と生活を守るためにアルバイトを掛け持ちして働いている。 今の生活が幸せかって聞かれたら……違うと答えるが……仕方がないのだ。 ……だけど時々、なぜ俺だけがって思う。
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