フィッシュボーン

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フィッシュボーン

友人がサロンを開業した。 赤ん坊が泣いている。 ワタシには、この赤子を泣き止ませることしかできない。悔しい。 別にサロンを開業したいわけじゃない。 自分の夢を実現できた友人への嫉妬心と言えば嘘になる。でも、 そうじゃない。 自由の利かない今だからこそ自由を手にしてるかのように輝かしい友人の姿と、自由を満喫できる時期にカチカチに自由を満喫できなかった自分に後悔してることに気付いたことが、悔しいのだ。 なんともいえない沈黙のあと、ワタシは言った。 『子どもは?結婚しないの?』 これが最大限のワタシにできる、友人への嫌味だった。 『サロンが忙しくてね。結構予約も殺到してるんだ。結婚したら終わり』 今のワタシには、何もかも友人の一言一言が、嫌味にしか感じない。 『ちゃんと食べてる?痩せたんじゃない?』とワタシが言うと友人は 『外食ばっかりだね作るのめんどう。』 こっちは外食なんて一切できないのに。 何もかもが、つまらない世界に思えてきた。 何もかもが、自慢にしか聞こえない。 もう二度と会うこともないでしょう。さよなら。 携帯電話のLINEから、彼女を、消した。
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