雨粒の一生

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「毎日、同じようなことの繰り返しではないのか?無理やり楽しんでいるように見えるのだが?」 『同じだって?そんなことないだろ?落下した場所によっても景色も周囲も違うじゃないか?水溜りに落ちたなら同胞と地上で出会えた喜びを分かち合えるし、寒い地域に落下すれば地上で氷となり留まることもできる。流氷になったなら世界を旅することができる。製氷機に使われれば人間の日常生活を覗き見ることができる。人間の話している様子って見ていると結構楽しいのさ、何を言っているか分からないけど、分からないのが楽しい訳だ。そしてそのまま体内に入ればいつもとは違う景色を見られる。最後は体外に排出される訳だが、どの出口から出るのか分からないところが楽しい訳だよ。』 「糞と一緒に排出されたとしてもかい?汚物と一緒に排出されても同じこと言えるか?」 『汚物・・・そんなこともないだろ?』 「いや、糞だぞ。くさいだろ?嫌じゃないのか?」 『嫌じゃないさ、汚物っていうのは排気ガスとかそういう自然になかったものだよ。だから嫌ではないよ。むしろ、いつ体外に出るか分からず待つ時間って楽しいだろ?明らかに定員オーバーの状態になっているのに排出されないこともあれば、まだ席に余裕があるというのに排出されることもあるだろ。白き遊覧船では、飛び降りるタイミングが分かるけど、人間や生物はそのあたり予測がつかないからね。』 「すごくプラス思考なのだな。汚物と一緒に出てくる時にそんなことを考える余裕はない。」 『仮に糞が嫌いだとしてもそれは受け入れないとダメだよ。鳥や人間の手によって僕らはより一層自由に動けている訳だからさ。』 「どういうことだ?」 『たとえば、俺らは真っ直ぐにしか落ちることが出来ない。ある地点から移動することは本来難しい訳だよ。けれど、生物の営みで知らない場所に移動し、色々と寄り道ができる訳だよ。その生物が生きる為に必要な行為であれば俺らは甘んじて受けないといけないと思う。』
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