マトリョーシカ

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 しかし、3度目に同じ小包があの女から旦那宛てに送られてきた時には、完全に気持ちが揺らいだ。 3度とも、鬱屈とした雨が降り続ける夕暮れ時。 空は黒く厚い雲に覆われて、既に外が薄暗くなりかけているような時に、同じ宅配業者が、同じ小包を持ってやってくる。 私は半狂乱になって、その小包を宅配業者に投げつけ、宅配業者は逃げるようにして、雨の中を去っていった。 ドアを開け放したまま、まとわりつくような湿気を感じながら、転がって濡れている小包を睨んだ。 小包はどんどん濡れていく。 そのまま置いていては、やがて帰宅した旦那に見つかってしまう。 何度捨てても、雨が降る夕方に同じ小包が届けられる。 捨てても、捨てても、この小包はきっと、私の元へと届けられるのだろう。 私は濡れた小包を拾い、家の中に入った。
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