マトリョーシカ

5/11
前へ
/11ページ
次へ
 濡れて泥で薄汚れた小包を、離れた所からしばらく見つめた。 あの女は、長年、旦那と深い仲だった。 それに気づいたのは、結婚して間もなくのことだった。 旦那がそういうことに詰めが甘かったのか、それとも、女がわざと気がつくようにと策を労したのか。 旦那のワイシャツの裏側に、私より20センチ以上も長い髪の毛があるのを見つけた。 分かりやすいくらいに、何本も。 まるで、しがみついて離さないとでも云うかのように、あった。 ネットで調べた興信所に、あの女の素行調査を依頼した。 調査員のまとめた何度目かの報告書を目に通した時、私はあの女が妊娠しているという事実を知った。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加