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木製の、赤い色の可愛い女の子のマトリョーシカ。
直感で、触れてはいけない気がした。
それなのに、私の手が、箱の中に横たわるマトリョーシカへと伸びていく。
それは好奇心からなのか。はたまた、旦那のことは何もかもを掌握しておきたいという征服欲からなのか。
ゆっくりと、マトリョーシカの頭と胴体部分の繋ぎ目の部分を開ける。
中には当然、少し小さくなった同じマトリョーシカが入っていた。
あの女は、何故旦那にこのマトリョーシカを送りつけてきたのか。
1つの疑問が、私に無音で単調な作業を続けさせようとする。
開けていく度に、マトリョーシカの中から小さなマトリョーシカが現れる。
最後まで開けた先に、何が待っているのか。
私はとり憑かれたように、マトリョーシカを開け続けた。
やがて、ピンポン玉くらいの大きさのマトリョーシカが、中から現れた時だった。
手にした瞬間、ある事実に気がつき、私は悲鳴を上げ、そのマトリョーシカを壁に向かって投げつけた。
マトリョーシカが当たった白い我が家の壁には、赤い色のスジがうっすらとついていた。
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