勇者はチートスキルを破棄しました。

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 神からチートスキルを与えられ無双する勇者なんて  地球でいうアクションRPGゲームの様に何度もリトライすれば誰だって世界を救えるただの「作られた勇者」でしかない。  本当の強者とは、たまたま拾った強すぎる力で周りをひれ伏し、その何一つ変わらぬ幼い精神で世界を統一するただの暴君なのか?  本当の強者とは、ゲームの一時の不確定要素に顔を真っ赤にし、コントローラーを投げ出すものの事だったのか?  違うはずだ。本当の勇者とは如何なる暴力に怯まず、退かず、怯えず、狂気にも立ち向かっていく真の強者のはずだ。  そんな事を漏らせる相手は俺の周りには誰もいなかった。可笑しいだろ? 世界を救った最強の勇者のパーティに本音を言える仲間すら   居なかったなんて。そうだ、二度も恥ずかしながら答えよう、俺の周りには仲間など居なかった。 「疲れたよ」  元居た世界の自分の名前すら忘れて没頭した勇者のお仕事ももう何も価値を感じない、どころか疎ましく思うほどになっていた。  俺は自分が知る限り全ての栄光を掴んだ、快楽も少々嗜んだ。とうとう本当の友達は作れなかったが。  そんなことを思い出しながら俺はこの異世界で一番高い城、アーストラック城の高台に居た。 「そんな俺だ、もう楽しいことは大体楽しんだ」  この異世界に転生したときに神様に”オマケ”と称して作られた良くできた顔を持っているらしい  その顔は今は失意に満ち溢れ、しょぼくれ、しがない顔に見える。 「だからもう……これでいいよな」  しがない顔に見える青年が高台の塀に、その高い身体能力でふわりと観客もいないステージに乗って見せる。
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