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「……」
「最初に身分を明かすのは礼儀として間違ってはいないが、聞き取り調査としては失敗だ、特にこんな場所の聞き込みではね。マスターだって立場がある。そうそう客の情報なんか答えるはずはないよ」
「……あなた……なんなんですか?」
「すまない。ちょっと言い過ぎてしまったかな。同業者としてついね」
「同業……まさか、刑事……」
彼は無言で静かに口元にだけ笑みを浮かべた。
「す、すみませんでした!」
「いや、いいよ」
「市警捜査課のキース ジャクソンと申します」
「俺はエドワード マクセル」
彼が名乗りを上げた瞬間、ガタガタッと店のいたるところから客が立ち上がる音が響き、同時に僕の脳裏に警告が響く。
『怪盗ブラックリザード、本名エドワード マクセル』
しかし、資料にあった色白黒髪の写真と目の前の青年は別人。同姓同名?混乱する僕の耳に怒号が届く。
「貴様がエドワードか!」
「この前の借り返してやる!」
店内に響く怒鳴り声と、けたたましく椅子を蹴り上げ突進してくる客。呆れたようにため息をつくマスター。洗練されたバーは一転して混沌としたカオスな空間に様変わりした。
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