(二)楽園

1/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

(二)楽園

 途中の町で二泊し、私たちはようやく王都に着いた。  初めて見る王都は、驚くほど大きな都市だった。広い石畳の道を、リャマが荷車を引いて歩いていく。道の両側には石やれんがでできた大きな建物が並んでいる。道端では、派手な刺繍が施された服に身を包んだ若い男女が、山積みになった野菜や果物の品定めをしていた。王都は裕福で、私の村とは何もかもが違う。リャマの上で私は溜息をついた。これからこんな場所で暮らしていくことが信じられなかった。  にぎやかな道を通り抜け、私たちの一行は、道の突き当りの大きな門の前で止まった。門を開けて中に入ると、私の祖母くらいの年齢の女性が出てきて、私たちに深々と頭を下げた。 「ライラさん、今日からここがあなたの家です」  私がリャマから降りるのを助けてくれた従者が、微かに笑んで言った。 「こちらは、妃候補の身の回りの世話をしてくれるザイダさん」 「初めまして、ライラ。楽園へようこそ」 「『楽園』?」 「ええ。この場所の名前よ」  ザイダはにっこりと笑った。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!