(二)楽園

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 ザイダが言っていた通り、翌年の乾季が終わる頃、アロンゾは王家に嫁いだ。私は十一歳になっていた。クキータと私はアロンゾの婚礼衣装を楽しみにしていたのだが、高貴な人々だけが出席を許されているということで、儀式に出ることは叶わなかった。私たちは別れを惜しみ、幸福な門出を祝って、出ていくアロンゾを見送った。真っ青な空の下、手を振るアロンゾの白い服がまぶしいほどに輝いていた。  アロンゾが王子の妃となって少し後に、メッツァが楽園にやってきた。メッツァは海辺の村の出身だった。  私が十二歳の年は婚礼の儀式はなく、十三歳の年の乾季が終わる頃、今度はクキータが嫁いだ。代わりにジーマが楽園の一員となった。  次は私が楽園を出る番だった。私は一体どんな人と結婚するのだろう。アロンゾもクキータも、相手についての情報は一切ないままに嫁入りをした。二人から音沙汰はない。王家の一員ともなれば、自由な行動は許されないのだろう。それでも、妃候補となった時点から、十分な食事と温かな寝床を与えられるのだから文句は言えない。楽園の少女たちは、誰もが貧しい村の出身だった。そういった村では、いつもより雨が多かったり少なかったりするだけで食料がなくなり、簡単に人が死んだ。故郷の家族を懐かしく思いながらも、楽園の快適さを知ってしまった私たちがもう昔の生活には戻れないことを、私たちはよくわかっていた。
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