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(三)婚礼
私が嫁ぐ日は、急に決まった。十四歳の、やはり乾季が終わる頃だった。不意に従者が楽園に現れ、明日の昼に婚礼の儀式を行うとザイダと私に告げたのだ。
「いつものことだけど、急なお話ねえ」
ザイダがぼやくと、占いで日取りを決めるので仕方ありませんと、若い従者は無表情に言った。
急な話だとザイダは言ったけれど、婚礼の日がそろそろだということ自体は、ザイダも私も前々からわかっていた。乾季が始まる頃、ザイダは私にアロンゾやクキータと同じ白い服を用意してくれた。光沢のある高級な糸を織って作った貫頭衣だ。
翌日私はその白い服を着て、ザイダやメッツァやジーマに別れを告げ、リャマが引く車に従者と共に乗った。
「これは清めのチチャです。先に飲んでおいてください」
濁った液体がたっぷり入った、土でできた碗を従者が差し出す。トウモロコシで作る酒だ。飲むのは初めてだった。どろりとしていて酸っぱくて、飲みにくい。残したかったが、清めのためだから飲み干せと従者が言うので、素直に従った。飲み干すや否や体が火照り、たちまち眠気に襲われて、私はぱたんと眠りに落ちた。
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