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「あめ?」
アメ玉ではない発音のあめ。あんまり聞いたことがないような気がした。
「そうよー、雨。空からね、水がぽつぽつと落ちてくるの」
「水が…」
私は驚いた。雨という不思議なもの、少なくとも記憶の限りでは見たことがなかった。
「どうして空から水が落ちてくるの?」
「どうして…そうなってくるといろいろなこと遡って教えなくちゃいけないのよね」
お母さんはちょっと困った様子だった。
「まあ小難しいことは学校に行ったら教えてもらえると思うわ」
人差し指をピンと真上に立ててお母さんは言った。
「空から水が降ってくるっていう天気だったのよ」
「そうなんだ…」
私は感心した。そこでふっと母の朝の発言に気付く。
「ってことは、雨がわるい天気!?」
「そう!よくわかったわね」
「水がふってくるなんて、すごいことなのにかわいそうなんだね」
良いとか悪いとかそんな言い方をされているのがあまり腑に落ちなかった。
雨を経験したことがないからこそかもしれない。
「そうね、でもそう言われていたのよ。雨だと不都合なことも多いしね」
雨がなくても、困るんだけど…とお母さんは小さな声で付け足した。
「お母さんは、あめ好き?」
私はそれが気になって聞いた。母から語られる雨、悪い天気と言いながらもそこにはあまり嫌悪は感じられない。
「好きか嫌いか…そこが難しいのよ、これから話すわ」
お母さんはそう言うとコーヒーをひとくち飲んで、少し姿勢を正した。
「それじゃ、お母さんと雨の話ね」
私の目を見つめて母は話し始める。
ここからは母から聞いた話を母の視点で綴っていく。
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