憎き恋しき

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「カッパって、妖怪のカッパ?」 「やだ、違うわよ、花柄の河童なんて」 お母さんはケラケラ笑った。 傘も、長靴も、知っているけれどカッパというものがわからなかった。 それに傘は日差しの強い日に使うものだ。そうか、水も避けられるのか…と納得した。 長靴は大人達が土の深いところで作業するときに履いているのを見たことがある。 「水を弾くビニールでできたコートみたいな洋服の形の雨具なのよ」 「あまぐ…」 「あ、そっか。雨具っていうのはね、雨のときに使う道具のこと」 「かわいい名前。洋服みたいなあまぐのカッパ、私も欲しいなあ」 「そうね、残しておけたらよかったのだけど…ああいうものは持ってこれなかったのよね」 お母さんは眉を下げて残念そうにしている。 「もっと雨の話、聞かせて」 私はお母さんの気持ちを昔の話に戻すように、ねだった。 「いいわよ、次はもう少し大きくなってからの話ね」
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