憎き恋しき

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「水族館って前に話してくれたところだよね!」 私はお母さんから聞いたことのある場所が出てきて少し興奮した。 水の入った水槽が沢山あって、その中に水に住む生き物が何百種類といるらしかった。 それらを眺めて楽しむ、夢のような場所だ。 「そうよ、水族館も本当に楽しいところなのよ、あのときはどうしても遊園地に行きたかったんだけどね」 「いいなあ…雨だとあんまり外に出たらいけないの?」 「いけないわけじゃないんだけどね、水に濡れたらいろいろ大変だから」 「お風呂上がりもすぐ体ふきなさいって、お母さん言うもんね」 「そうよ、風邪ひいちゃうからね。雨の中で遊ぶのも風邪ひいちゃうから」 「雨の水はあたたかいの?つめたいの?」 あたたかい水ならシャワーとどう違うのだろう。 「うーん、だいたい冷たいかな。夏の雨とかは少し生ぬるい気もするけど」 「そうなんだ…わたしも夏の雨しりたいな」 いろいろなことを経験しているお母さんが羨ましかった。 お母さんは私の頭をポンと撫でて、 「これからよ。お母さんも知らなかったことをあなたはこれから山程知っていくんだから、羨ましいわ」 母のその言葉で自分だけの経験というものの大切さに少し気が付いた。 お互い様ならば、私は母から話して聞かせてもらえる分幸せなのかもしれないとも思った。
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