<2>林の中で、どえらいこっちゃ、わっしょい、わっしょい

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<2>林の中で、どえらいこっちゃ、わっしょい、わっしょい

「うーん。もうそろそろだと思うんだけどな」  メメンが、地図を開いて確認する。林の中に入って、かれこれ一時間。突っ切れば三十分で抜けるはずなのに。  おい  メメンよ、話が違うではないか。  まったく  このポンコツめが。船頭にも使えんとは。お前には、ガッカリしたぞ。 「ねぇ。あっちじゃない」  そう言った私に対して、呆れ顔になるメメン。 「ソラ。あっちは、逆方向だよ。だいたいさ、ソラが林の方が近道だって言い張って、先にズンズン行っちゃったから、こんなことになったんじゃないか」  なんだと、メメン  私に盾突くなど、一兆年早いぞ。  この超絶キュートな私と、一緒に旅ができるなんて、至高の幸福ではないか。その有難みすら感じず、あろうことか、不満など口にするとは。己の立場を、まったくわきまえていない、残念極まりない男だ。  背丈は私と同じくらいで、顔も中の中程度のメメン。二人で並んでいたら、釣り合わないのは、自明の理。故郷のポポ村で同い年が二人しかいないというハプニングがなければ、眼中にすらなかったのに。  そもそも  最強の魔法使いになるであろう、この私と、落ちこぼれのメメンとが、一緒に派兵とは。村長のママフは、何を血迷ったのだろうか。ヤツの決断には、首を傾げざるを得ない。 「方角的には、あっちなんだけどな」  メメンが、暗がりの方を指差す。草の生い茂った雑木林。なんだか嫌な感じ。六日前の夜の残像が、脳裏にちらつく。家に侵入してきた男に、なす術なく捕らえられてしまった大失態。この人生最大の汚点。  ああ  今、思い出すだけでも、ムカムカしてくる。あれは、絶対に寝ぼけていたせいなんだ。絶対に、絶対に、絶対に、そう。だって、そうじゃなきゃ、説明がつかない。この天才魔法使いが、恐怖に怯えて、魔法すら唱えることができないなんて。そんなこと、あっていいはずがない。いや。あるわけがない。 「あっちは嫌」 「えっ、でも」 「嫌ったら、嫌」 「ちょ、ちょっと待ってよ。ソラ。そっちは…」  カツカツと歩き出した私に、慌ててついてくるメメン。
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