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1.新たな目覚め
「う……うん……」
瞼がゆっくりと開き、白い光が目に差し込んできた。いつも見る景色と違う
ことに気づく。なんだろうこれは…… 疑問に思う。
朝なのか夜なのか起きた時の時間がバラバラだが、いつも視界に入るの
は変わらない。自分の部屋の天井だ。薄暗く、シミがあって、見飽きた
天井のはずだった。
一面真っ白い天井だった。いや天井なのかどうかも分からない。ひたすら
白い空間が続いていた。白い空を眺めているようだった。寝たまま横に
首をひねってみた。でも同じような白い空間。壁らしいものも存在しない。
このままでは何も分からない。僕はゆっくりと手をついて体を起こすことに
した。初めて白い空間以外の物体が目に飛び込んできた。
誰かが座って自分を見ている。背景の色と同じテーブルがあって、その奥
に腰かけている。女の子だった。漆のような漆黒の髪が艶やかで、前に
切り揃えられたおかっぱな感じが和風の美人かと思ったが、目鼻立ちは
外国人モデルみたいな左右対称で均整のとれた顔だった。
歳はどれくらいだろう?自分と同じ年なのか?人は見た目によらないって
いうから、すごい年下かもしれない。女の子はじっと僕を見ていた。
ずっと目覚めるのを待っているかのように思えた。
女の子が自分に向かって口を開いた。
「○×△☆♯♭●□▲★※ %△#?%◎&@□!」
何を言っているのかさっぱり分からなかった。英語?フランス語?スワヒリ語?
地球の言葉じゃないかもしれない。とにかく日本語ではないことは確かだった。
「ちょっと……何言ってるか……わかんないだけど。」
思わず返したが、同時に恥ずかしくなった。相手が日本語分かるのかすら
確かじゃなかったし、何かジェスチャーでもするべきかなとも思ったけど
意志が伝われば、なにか反応してくれるかなって思った。
すると女の子がすっと立ち上がった。そして横に振り向いて手を伸ばす。
よく見ると白い背景に隠れて気づかなかったけど、白い棚がそこに存在
していた。棚に手を突っ込み、女の子が引き出すとそれは一冊の本だった。
表紙も同様に真っ白で、なにも書いていないように見えた。何食わぬ顔で
本をテーブルに置いて、パラパラとめくり始めた。
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