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「あなた、日本人ね。」
女の子から発せられた言葉は、馴染みのあるワードだった。いきなり流暢な日本語
を女の子が話せるようになるとは……さっきの訳の分からない言語はいったい
なんだったんだ。
「ああ……そうだよ。君は誰?ここはどこ?」
僕は体を起こしたまま、彼女に尋ねた。女の子は明らかに面倒くさそうな顔を
見せる。なんなんだろう。この態度は……
でもこれが初めてじゃない。こんな顔を見せられたことは何度もある。
諦めというか憐れみというか、高い場所から見下すような目付き。
「人の名前聞くときはまず名乗るものじゃないの? 礼儀も知らないのね。」
鼻に突く口調だ。いくら可愛くてもこんな態度取られたら腹が立つ。
「勝手にこんなところ連れてきて礼儀ってよくいうよ。なら名乗ってやる。
僕の名は大門晶。さあ名前聞いただろ。そっちは?」
怒りに身を任せて言ってみたが、そもそもなんでこんなところにいるんだ?
夢なのか?よく夢か現実かを確かめるために頬をつねるっていうから試して
みたが普通に痛かった。痛覚はしっかりしていた。現実だとしたらここは
何?手掛かりはこの態度の悪い女の子だけだった。
「……私は……アニタ。これはまた失敗だね。まったく最近の奴らはロクな
のいないわね。」
目の前のおかっぱはアニタというそうだ。それにしても口が悪い。状況は
分からないが失敗とかロクなのだとか間違っても褒めてはいないようだ。
このアニタが何者かは分からないが、自分が何故ここにいるのか記憶を
辿ってみた。
最後の記憶は、ネットに書き込みしていたところで力尽きて眠った
ところまでだ。その時はベットじゃなくて、キーボードに伏せて眠りに
ついたような気がする。ならこのベットはいったいなんだ?質問したい
ことだらけだ。
「じゃあアニタ。ここはどこなんだ?僕はいったいどうしたんだ。」
アニタはため息をついた。本当面倒くさそうに……
「ここは……そうね……異界の門と呼ばれている。そして今から
あんたたちが異世界と呼んでいる世界を救いにいくのよ。」
「は?異世界?何言ってんだ。」
その瞬間、強烈な眠気が襲ってきて、意識を失った。
「みんなそう言うわ。」アニタの言葉が耳にこびり付いた。
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