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「あの……ソフィアさん。」
「ソフィアで結構ですわ。」
ソフィアは僕の言葉にすべて笑顔で答えてくれる。何を聞いても安心だと
思った。
「ソフィア。その青き月とか勇者とか言われても……何のことだか分からないん
だけど、何のこと?」
そう尋ねるとソフィアはすっと立ち上がった。そして改めて手を差し伸べる。
「ついてきていただけますか?晶様。」
ソフィアの澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。晶様と呼ばれるのは背中がむずむず
するが、彼女の手を取ってベットから立ち上がった。
その部屋は優美な調度品などが置かれていて、洋風建築みたいな感じだった。
よくある中世ファンタジーの世界みたいな感じなんだが、ドラマやゲームの
中の知識なんで、そう見えるだけなのかもしれなかった。
立ち上がって自分の服装を改めて見てみる。いつも着ている部屋着じゃなかった。
白いシャツに長いズボン。素材は綿みたいだ。ズボンと腹の間に指を入れて
股間を覗き込むと、白いパンツが見えた。中世時代にパンツがあるか分からない
が勝手に履き替えられていたようだった。
ソフィアが前を歩き、僕は連れられるように足を速めた。廊下に出て階段を
登っていく、レンガつくりの壁で、隙間がほとんど埋められている。かなり
精工に作られているようだった。興味が出て触ろうとするが、ソフィアが
手を引っ張ったためそれはかなわなかった。
階段を上ったり降りたりしたところ、やっと大きな扉の前に立った。
豪勢なつくりでいかにも奥に偉い人がいるような雰囲気を醸し出していた。
扉がゆっくりと開かれる。その先には赤い絨毯が奥まで続いている。これが
レッドカーペットってやつか……と感心してしまった。ソフィアが歩を進める。
僕も黙ってついていく。一番目立つところが数段上になっていて、玉座と
それに座っている王冠をつけた人、その横には年配の人がじっとこっちを
見つめていた。
「晶様。恐れ入りますが私の動きを真似していただけますか?」
ソフィアは歩く途中に僕にそっと耳打ちをした。そして玉座に座る人
つまり王様の前に立った。ソフィアは片膝をつき、頭を下げる。このことか
と思い、僕もあわてて真似をして同じように膝をついた。
「青き月の勇者様をお連れしました。」
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