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すっと通った鼻筋、長い睫毛。
前髪で見えないけれど、たぶん眉のあいだにはしわが寄っているだろう、どこか苦しそうな顔。
口をうっすらとあけているところは少し無防備な感じがする。
疲れているのかもしれない。
少し大きくこくりと頭が揺れた拍子に、前髪の先から、雫がひとつ、ぽつりと落ちた。
落ちた雫が、鞄を抱く青年の手の甲で小さく跳ねる。
大きくて骨ばった手。
ああ、男の人なんだな、と改めて思う。
とても、優しそうな話し方をする人だったけれど、それでもやっぱり、きちんと男の人なんだ。
男の人は、苦手だ。
わたしは、更に窓際に体を寄せようと、座り直す。
実際には、もうこれ以上ないくらい窓に寄っていたから、ほとんど移動しなかったけれど。
ぴたりと二の腕に触れた窓が、冷たい。
青年は、変わらず少し苦しそうな顔で、眠り続けている。
髪が濡れたままで、風邪をひかないといいけど……。
窓に当たる雨粒の音を近くに聴きながら、そんなことを思った。
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