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そういえば、前にもこんなことがあった気がする。
雨音を聴きながら、ふとなにかが思考の端にひっかかった。
いつ、どこで?
こくり、こくりと舟を漕ぐ横顔。
前髪が目にかかっていて、顔はよく見えないけれど、その髪の先から滴り落ちる雫。
ねえ、風邪ひくよ?
そう、声をかけたのはわたしだった。
--雨は嫌い。
本はただでさえ湿気に弱いのに、ゲリラ豪雨ともなれば鞄の中にしまってある本すら危険だし。
図書館で借りた本を持っている日は、もしもの雨に備えて折りたたんだビニールの袋も携帯していた。
普段は。
それなのに。
わたしは雨に濡れた窓の外を見上げて、ため息を吐いた。
空は曇天。
大粒の雨は、まだやみそうにない。
高校を出てから図書館にたどりつくまで、全く雨の気配はなかった。
天気予報だって、雨のマークはついてなかったのに。
本を借りて、図書館を出ようとしたら、自動ドアが開いた途端、激しい雨音が飛び込んできた。
目の前には、まさに滝のような雨のカーテン。
折りたたみ傘は持ってる。
けれどビニール袋は、このあいだ使って、補充するのを忘れていた。
小さな折りたたみ傘だけで、果たしてわたしは本を守りきれるだろうか。
答えは否で、わたしは館内に引き返して、借りたばかりの本を読んでいたわけだけれど。
閉館までに雨がやまなかったら、どうしよう。
不安に襲われながら窓の外を眺めていると、ふと、外のベンチに人影があることに気づいた。
敷地内にある休憩用スペースの四阿で、屋根はあるけれど風向き次第では、思い切り雨がかかるはず。
そんなことを考えながら眺めていると、ふいに、ぐらり、と人影が傾いた。
えっ??
わたしは思わず腰を浮かせていた。
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