第二話 【妬んで、恨んで】

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▽▼▽ 私には、二人の兄がいる。 片方は、私に優しくてカッコいい私が大好きなお兄ちゃん。 もう一人は、淡々としていて、まるで機械みたいな兄。 でも、私は知っている。 お兄ちゃんが兄の事をまるで居ないかのように無視している事も、その度に哀しそうに顔を歪める兄の姿も。 正直言ってしまうと、私もお兄ちゃんも兄の事が怖いのだ。 何を考えているかわからない、 それでいて、全てを見透かしているようなそんな瞳が。 私は、お兄ちゃんは、その瞳が恐ろしかった。 だからなのだろうか、私はあの人に面と向かって【お兄ちゃん】と呼んだ記憶が無い。 最後にあの人と話した時の記憶すらあやふやで、 よくよく思い返して見れば、私は、 あの人の笑った顔を見た事が、一度たりとも無いのだ。 何時も見ているあの人の笑顔は、苦しそうに、哀しそうに、唇を歪め、何かを我慢するかのような、そんなものだ。 今日だって、私はお兄ちゃんに映画のチケットを貰っているのに、あの人は、兄は、貰っていなかった。 私だけだったのだ、貰ったのは。 チケットを貰ったことにはしゃいでいて、嬉しかったあの時、私の横を足早に兄が歩いていった。 すぐに、外に行ってしまったけれど、私は気付いてしまった。 母が、父が、恨めしそうに、兄を見ていたことを。 兄は、怖くないんだろうか。 寂しくないのだろうか。 父にも母にも見放され、嫌われ、怖がられて。 私達にも、ずっとずっと無視されて。 《この状況を作り出したのは、私達だって言うのに》 《そんな事を思ってしまう自分がいるのだ》 《自分が如何に弱いかという事を顕著に知った日》
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