第一話 【ねェ、お兄ちゃん】

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貴方が朝の挨拶をするのは、 目の前にいる貴方に似た黒い髪の、可愛い可愛いあの子にだけ。 僕が、貴方に「おはよう」って言っても、貴方は聞こえていないかのように見向きもしない。 「おはよう、お兄ちゃん!!」 「おう、おはよう莉奈(りな)。朝から元気そうで良かったよ」 幸せそうな会話。 でも、その中に僕はいない。 「………ッ」 胸が締め付けられるように、痛い。 慣れている筈なのに、いつも通りの光景の筈なのに、それでも胸が痛いのはきっと僕が、まだお兄ちゃんを【好き】だからなのだろう。 当たり前、これが当たり前なんだ。 伸ばしたその手は、宙を切って行く場所を見失った。 《ズキズキと痛む胸を無視して》 《僕は、一人静かに部屋に篭った》
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