俺は、そこにいた。

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俺は、そこにいた。

意味もなく流した涙は、頬を伝い、音も立てずに地面に落ちた。 意味もなく? 違うな。 ああ、俺は馬鹿だ。そこに、彼女がいるなんて、どんな妄想をしていたんだろう。 馬鹿というか、気持ち悪いな、俺。 笑おうとしたが、あいにく俺の顔は涙の為に崩す事を許してくれなかった。 彼女を犠牲にした俺の心臓は、鳴り止まない。 彼女を犠牲にした俺の目は、揺らぎ続ける。 彼女の心臓を潰したのは、俺自身だった。 いや、実際はあのタイヤだけど。 俺が殺した。 俺の心臓が、憎かった。 自分が、憎かった。 普通、反対だよな。 男が、女を守るモンだよな。 カッコわり…。 カッコいいよ。 ああ、まただ。また俺は変な妄想をしている。 俺にこんな妄想癖あったっけな。 ねえ、 …。 翼。 聞こえた。聞こえて居た。 翼…。 最初から。ずっと。 聞こえてたんだ。 彼女は、居たんだ。 いや、居るんだ。 俺は、彼女を見つめた。 見えないけど、彼女は、居るから。 …。 笑った。 彼女に向けて。笑った。 「…ごめんな…。 ありがとう。」 俺は、笑えた。
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