0人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は、そこにいた。
意味もなく流した涙は、頬を伝い、音も立てずに地面に落ちた。
意味もなく?
違うな。
ああ、俺は馬鹿だ。そこに、彼女がいるなんて、どんな妄想をしていたんだろう。
馬鹿というか、気持ち悪いな、俺。
笑おうとしたが、あいにく俺の顔は涙の為に崩す事を許してくれなかった。
彼女を犠牲にした俺の心臓は、鳴り止まない。
彼女を犠牲にした俺の目は、揺らぎ続ける。
彼女の心臓を潰したのは、俺自身だった。
いや、実際はあのタイヤだけど。
俺が殺した。
俺の心臓が、憎かった。
自分が、憎かった。
普通、反対だよな。
男が、女を守るモンだよな。
カッコわり…。
カッコいいよ。
ああ、まただ。また俺は変な妄想をしている。
俺にこんな妄想癖あったっけな。
ねえ、
…。
翼。
聞こえた。聞こえて居た。
翼…。
最初から。ずっと。
聞こえてたんだ。
彼女は、居たんだ。
いや、居るんだ。
俺は、彼女を見つめた。
見えないけど、彼女は、居るから。
…。
笑った。
彼女に向けて。笑った。
「…ごめんな…。
ありがとう。」
俺は、笑えた。
最初のコメントを投稿しよう!