顔色を伺う

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 インターフォンがなり、はいはいと言いながら母親が玄関のドアを開けにいく。その様子を横目で見ながらテレビのニュースをぼんやりと眺める。 『続いてのニュースです。××市の民家で、この家に住む山本明子さん(47歳)が首を絞められた状態で殺害されているのが発見されました。室内は荒らされた形跡があり、警察は強盗殺人として捜査を進めています』 「綾乃久しぶり。元気にしてた」 「久しぶりお姉ちゃん。ぼちぼちね」 「薫ちゃんも久しぶりだね。私の事覚えてる」 「……」  無言。リビングで玄関での会話に聞き耳をたてていたからつい噴き出してしまう。覚えられてないのか、母。ああ、でもここまで聞こえてこないぐらいの声だった可能性もあるのか。 「ごめんね。薫、恥ずかしがりやになっちゃって」  綾乃さんがフォローを入れてる。前者の可能性が高いな。 「いいよ、前にちょっと会っただけだもんね。そりゃ覚えられないか。でも翔太のことは覚えてる?」 「……翔太お兄ちゃん?」  小さいけど確かに聞こえてきた。覚えてくれてたんだ。 「そう、リビングにいるよ、おいで。綾乃も」 「ありがとう、お邪魔します」  足音がこちらに近づいてきて、ほどなくリビングの扉が開けられる。 「翔太、薫ちゃん来たよ」 「翔太君こんにちは、大きくなったね」 「綾乃さんこんにちは」  軽く頭を下げ、視線を綾乃さんの後ろに隠れている小さな女の子に向ける。サラサラな黒髪にくりくりとした大きな目。そう言えば、薫ちゃんってこういう顔だった。確か、目線を合わせて話した方がいいんだよな。薫ちゃんと同じ目線になるよう彼女の前でしゃがみ込む。 「薫ちゃんこんにちは。俺のこと覚えてる?」  綾乃さんの後ろに隠れたままだったけれど、薫ちゃんはゆっくりと首を縦に振った。
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