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「とりあえず、お茶にしようか」
その一言から、母と綾乃さんは食卓を挟みながら世間話に興じている。もっぱらお互いの旦那の悪口だったけれど。俺はリビングでソファーに座りながら薫ちゃんと一緒にテレビを見ていた。
「ん、どうしたの?」
俺の方を見ていた薫ちゃんに声をかけると薫ちゃんは首を横に振ってテレビに視線を移す。そしてしばらくするとまた俺の方をじっと見ていた。何だか少し、居心地が悪い。男の子なら公園でキャッチボールだの、戦闘ごっこだので上手く遊べるけど、女の子だと正直どうしていいかわからない。
「薫ちゃん大人しくていいわね。やっぱり女の子の方が男の子より大人になるの早いのかしら」
「それは良いんだけど。あの子最近人の顔色ばかり伺うようになっちゃってる気がして。もっと自分のやりたいこととか言って欲しいのに」
「まぁまぁ、そのうち自然と自分から言うようになるよ。ってもうこんな時間じゃない。そろそろ行こうか」
「そうだね」
「翔太、私たち出かけるから薫ちゃんのことよろしくね」
「翔太君。悪いけどよろしくね」
「わかった、いってらっしゃい」
「薫、翔太お兄ちゃんと一緒にお留守番しててくれる」
綾乃さんの言葉を聞いた途端、薫ちゃんは勢いよくソファーから立ち上がると綾乃さんのところまで行き、服をぎゅっと掴んだ。
「……薫も一緒にいく」
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