第二章

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などと考えつつも自宅へと歩みを進めると そこには、少なくとも20、21世紀の日本の基準では建てるのに二億円くらいの値段がつきそうな様々なデザインの豪華な一軒家が建ち並ぶ光景があった (アフリカにインドにイスラムに中華にイギリスにフランスにイタリアにロシアに江戸に平安にと世界中の家がある) どこの高級住宅街かな? 嘘です、分かってます、この住宅街の一軒は俺の家です 何でたかが宇宙空間作業員風情が高級住宅に住んでいるんだ? その理由としては こんぴら は宇宙開拓時代の比較的初期に建造された小型コロニーが元となっているからだ 何で理由になるのかというと、宇宙開拓時代初期は壁の外側は宇宙空間という生命の危機が常にある上にコロニー内という完全な閉鎖空間におけるストレスが過大に見積もられた結果 こんぴら 以外の全てのコロニーもだが地球に落下する事故に対処できるように月の裏側にあるラグランジュポイント2に配置されたため母なる地球が見えないストレスも考慮された結果、せめて居住空間だけは豪華にしてやろうと腐敗官僚達が考えたからだ(なぜ腐敗がつくのかというと高級住宅の発注のさいに、かなりの利権が動いたらしい) 腐敗官僚共のおかげで住宅環境が良いのは二十世紀後半生まれの俺としては、痛し痒しといったところだが…… そうして俺は住宅街の一軒、右隣にログハウス左隣にゲルが建つ二十一世紀前半の様式の家へと歩みを進める まあ俺の家なんだけどね! 家の鍵をサイフから取り出して 鍵穴に差し込み開錠して金属製のドアハンドルを引きドアを開ける なんとも面白いことに地球標準暦などと呼ばれる未来でも金属製の鍵が現役で使われているのだ まあカードキーなんて電力が無いと、ただのプラスチック板だしな ましてや完全に人工的な空間である初期のスペースコロニー内だ いくらでもトラブルが発生したとて不思議ではない ならば人間がちょっと手間をかけるだけですむ金属製の鍵が使われ続けても不思議はないだろう?
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