序章

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アステロイドベルトにかつて存在した小惑星ベスタの軌道上周辺 船長視点 地球標準時間にして 2320年4月28日20時1分 私の勤務時間は1時間前には終了し 入浴を済ませ 船長室のベッドで睡眠前に個人的な日記をつけていたら 部屋に備え付けの通信モニターに映像が写る 切れ長の目をした怜悧な印象を受ける黒髪でショートボブの女性、我が火星開発用航宙船こんぴらの第一航宙士の坂東晴美が珍しくも困惑の表情を浮かべながら重大な そう後からも重大としか表現するしかない事態を告げて来たのだった…… 「それで?報告してきた人型の物体とは?」 「はい船長こちらの偵察用ドローンの映像モニターをご覧下さい」 モニターには確かに人型の物体… 否、人としか思えない というよりも端的に表現すれば… 「第一航宙士の坂東晴美君、確認しよう、私にはあの人型の物体はポロシャツにデニムのジーンズとスニーカーを履いた10台後半から20台前半の中肉中背の男性にしか見えないが、君の判断はどうかね?」 「はい!船長!私も同意見ですが、しかし……」 第一航宙士の坂東晴美は言葉を濁す…… まあ無理も無いことだ…… 「外が宇宙空間である以上、そんな事はあり得ないか……」 「はい、人道的には回収すべきなのでしょうが…… 私自身を含めたクルー全員が、どうしてもSFホラーの傑作の類が脳裏を過ってしまい……」 当然だろう… 私も見なかった事に出来るなら見なかった事にしたい…… だがエイリアンだとしても、むしろ、その可能性の方がはるかに高いが 友好的な種族の可能性も当然存在する以上、人道的に見捨てる事はあり得ない…… 「十二分に理解出来るが…… 火星のテラフォーミングに使用された小惑星ベスタがあった軌道上でもあるからスペースデブリの警戒が必要かな?」 「は?いえ必要はありませんスペースデブリが存在したとしても周辺に漂うデブリは1cm未満のサイズなので今の宇宙服ならば問題なく防げます」 確かにそのとうりだ今の宇宙服なら最大10cmのデブリまでなら防げる だが感の鈍い女だ…… このケースでは宇宙空間作業員に救助をさせないのは当然だが だとすれば私が救助の指揮 板東君が救助作業にあたらねばならないのにだ…… 結局、板東君は直接的な言葉で説明されるまで気がつかなかった……
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