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しかしそれでも俺はチームメイトに迷惑をかけられないと投げ続けた。
俺が点を取られなければ勝てる。その思いだけで痛みを必死に堪えてきた。
でも、思えばその選択が間違いだったのかもしれない。
俺は試合中に倒れた。
体全体に力が入らなくなり、立ち上がることも出来なかった。
そして救急車で運ばれて医者に言われた絶望的な一言。
『もう野球は出来ませんね』
……食料がなくなったか。そう思って俺は重い腰を上げる。
試合も終わりちょうどきりがいい。
俺は近くのコンビニになくなった飲み物や食べ物に調達に出掛けた。
親にバレずに忍び足で玄関を開けて久しぶりの外に出る。
外の空気が美味しいとは思えない。ジャージ姿で俺はめんどくさいと思いながらコンビニまで向かって行った。
既に暗闇となった外は俺の視界を狭める。
よく見ないと分からないな。外灯があるところまで行かないと。
俺はジャージのポケットに手を突っ込みながら歩いて行く。
すると前方から声が聞こえてきた。
男女の声。そこには仲良く手を繋ぎあうカップルがいた。
羨ましいと感じながらも俺は顔を合わせず立ち去ろうとした時だった。
――ん? 男の方の顔何処かで見たような。
俺はカップルの男側に見覚えがあった。
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