第1話 肩を壊して

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「ねぇ! やしろっち! 次はいよいよ地区大会決勝だね」 「ああ! 必ず次もホームラン打って見せるからな」 「うん、豪快なホームラン期待してるね」  間違いない。俺が中学時代に対戦したことのある強打の捕手。  今はプロ注目の八重島勇人(やえじまゆうと)。  甘いマスクに抜群の運動神経。さらには巧みなリードとパンチ力のあるバッティングで俺も何度も苦しめられた。  しかし対戦成績は俺が勝っている。あの時はいつかバッテリーを組みたいと話していたが。  今となっては届かない雲の上の存在になってしまった。  野球が出来なくなったばかりではない。普段の生活もゴミと化してしまったからな。  俺はそんなことを思いながら立ち去ろうとした時だった。 「あ……」  あいつボール落としていきやがった。  ポケットにしまっていたのだろう。  汚くなった土だらけのボールを俺は拾う。久しぶりに持った白球に俺の心が躍る。  いや、何を考えているんだ俺。  もう俺は野球が出来ないんだ。呼びかけようとしたが声が出ない。  投げようと思っても肩がその度に痛む。  八方塞がりの状況に俺はどうしようかと考える。 「たく、しゃあねえな!」  だったら走るしかないな。俺はその場から駆け出し八重島を追いかける。     
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