第1話 肩を壊して

4/7
前へ
/146ページ
次へ
 会いたくはない。だけど何かきっかけが出来るかもしれない。  この生活を変える大きなきっかけが。  息を切らしながら俺は八重島の背中を追う。  そして交差点に差し掛かった時。  赤信号で止まっている二人の姿を発見した。  見つけた。俺は二人に呼びかけようとしたその時だった。 「きゃ!」 「どうした?」  おいおい、嘘だろ!? トラックが二人に迫って来ていたのだ。  運転が荒い。居眠り運転? 飲酒運転? どちらにしてもやべーだろ。  しかし二人はあまりの突然のことに動くことが出来ないようだ。  ――俺に出来ること。考えてる暇はない。  そうだよな。このまま生きていても俺はこの呪縛から逃れられない。  もう自分のために命を使うのはやめた。こんな野球が出来ない自分に価値はない。  だったら野球が出来る奴に。この命を託してやる! 「どけ!」 「うお! あれ? お前って……」  二人を押し倒しトラックから離れさせる。  危機一髪二人は助かるだろう。  ただ正面に立った俺はトラックの餌食となる。  ああ、終わりか。最初から最後までろくでもなかった。  でも、よかった。野球が大好きな奴がこんな形で失うことなんてなかったのだから。  走馬灯のように。俺は野球をやっていた頃の自分を思い出す。     
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加