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会いたくはない。だけど何かきっかけが出来るかもしれない。
この生活を変える大きなきっかけが。
息を切らしながら俺は八重島の背中を追う。
そして交差点に差し掛かった時。
赤信号で止まっている二人の姿を発見した。
見つけた。俺は二人に呼びかけようとしたその時だった。
「きゃ!」
「どうした?」
おいおい、嘘だろ!? トラックが二人に迫って来ていたのだ。
運転が荒い。居眠り運転? 飲酒運転? どちらにしてもやべーだろ。
しかし二人はあまりの突然のことに動くことが出来ないようだ。
――俺に出来ること。考えてる暇はない。
そうだよな。このまま生きていても俺はこの呪縛から逃れられない。
もう自分のために命を使うのはやめた。こんな野球が出来ない自分に価値はない。
だったら野球が出来る奴に。この命を託してやる!
「どけ!」
「うお! あれ? お前って……」
二人を押し倒しトラックから離れさせる。
危機一髪二人は助かるだろう。
ただ正面に立った俺はトラックの餌食となる。
ああ、終わりか。最初から最後までろくでもなかった。
でも、よかった。野球が大好きな奴がこんな形で失うことなんてなかったのだから。
走馬灯のように。俺は野球をやっていた頃の自分を思い出す。
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