第1話 肩を壊して

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 心残りはある。もう一度だけ、全力で野球をしたかった。  白球を追いかけて、投げて、打ちたかった。  俺は瞼を閉じて迫りくるトラックの全てを受けた。  押しつぶされる感覚があったがそれは一瞬だけ。  悲鳴と叫び声が聞こえたがそれも気にしない。  さようなら。俺の虚しい人生。そして野球……。  最後に涙が出たのは忘れもしなかった。  ――ん? 「昴(すばる)! 遅刻するわよ! 今日も野球の練習があるんでしょう!」  あれ? 何が起こったんだ? 目の前には起こしてくれる母親の姿があった。  しかし俺の知っている母親ではない。俺の母親はもう少し老けててこんなに美人ではない。  それに肩が異様に軽い。違和感が半端ではない。  ……あの事故から助かったのか。いやそんなはずはない。  確実に俺は死んだ。助かる保証なんて何処にもない。  あの事故から助かったとなると奇跡だぞ。  それに昴って。俺の名前は透だ。  母親は慌てて一階に降りていく。朝から騒々しいと思いながら俺は鏡を見る。  しかし俺は鏡で自分の顔を見た時。驚きのあまり大声を出してしまった。 「な、なんじゃこりゃ!」 「うるさいわよ! はやく降りてきて朝食を食べなさい!」 「……はい」     
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