第1話 肩を壊して

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 有り得ないことが起こっている。俺は別人となっていた。  顔付きは前よりも童顔? 背もそんなに高くない。  髪も染めていない。いやいやどうなってんだこれ。  体全体に電撃が走るような感覚となる。  それぐらいに衝撃的だった。  すぐに駆け足で一階に降りて母親に問かざす。 「なぁ! 母さん! 俺の肩の怪我って治ったの?」 「はぁ? あんた肩なんて怪我してたっけ?」 「いや、俺は野球部のエース……だから一人で投げ続けてそれで」 「あははは! なに寝ぼけたこと言っているの? あんたは投手でもないし外野手でしょ?」  どうなってんだ? しかしこの母親が嘘を言っているとは思えない。  にしてもこいつも野球をやっていたのか。  だから部屋にバットやグローブが置いてあったのか。  俺は考える。あの事故で肉体が移り変わったのか。  いやそんなことが有り得るのか。だったら元々のこいつはどうなったんだ。 「それにしても驚いたわ! あんた……学校の屋上から飛び降りたらしいじゃないの」 「は? いつ俺がそんなこと」 「母さん、病院であんたが息を吹き返したとき……本当に安心したのよ」  俺が学校の屋上から飛び降りた? いやいくら何でも俺は自殺までは考えない。というか出来ない。     
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