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等距離であたしを囲う目たちには、歪んだ期待が浮かべられている。
力作だと言うでっちあげの遺書を使う状況がくるんじゃないかと彼女たちは期待している。
その時が来たら彼女らは、周囲にどんな顔をするんだろう。
それを想像するだけでも怖い。
死にたくない。
こんな形でなんか死にたくなんかない。
死んでお父さん、お母さんを悲しませたくもない。
それにあんなものを残して死ねば、みぞれ先生にだって迷惑がかかる。
それでもあたしは突き刺さる視線に抗えず、汚れた靴下を履いた足を残された背後の逃げ場へと動かす。
背中にあたったフェンスを確認すると、そこにはちょうど身体の小さなあたしがくぐれるくらいの穴があった。でも穴の向こうに床はなく、飛び移れるような場所もない。
周囲から「早く」とか「グズ」という言葉が聞こえ、急かすように包囲が狭まってくる。
どうしようもなく怖い。
いっそこのまま飛び降りてしまいたい。
でも、
でもでも……
「安心していいよ、靴は代わりにそろえておいてあげるからさ」
涙目で地面を見つめるあたしの後ろから、そんな誰かの声が聞こえた。
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