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『カシワギに出動命令は出てないな? 話せるか』
「いえ、今は席を外していて――どうされましたか」
『あの銃げ――いや、ちょっと彼女に聞きたいことがあってな』
濁してしまった言葉をごまかすように、『すまん、またかけ直す』という一言を残して電話は切れた。
ところが、リンが席についてすぐカツラギからの電話が鳴る。
室長も忙しないなとひとつ息をついて出たリンに、
『たびたびすまん。たった今、朗報が入ってきた』
「朗報?」
『ああ。カシワギにも伝えて欲しいんだが』
落ち着いた口調ではあったが、心なしかさっきよりも早口に思えた。
……冷静な彼も、さすがにこれは安堵しただろう。
カツラギの話を反芻しながら、ゆっくりと受話器を戻す。
リン自身は気づかないが――血の気が失せた美しい顔は、強張っていた。
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