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玄関のドアを開けると、脱ぐ場所もないくらい靴が散らばっている。居間を覗くとコタツにぎゅうぎゅうに家族が詰まっていて、甥姪たちがおかえりと駆け寄ってくる。お餅食べる? みかん食べる? と親も兄弟も次から次へとやかましい。
「ねえ、お年玉は?」
崇史の一言で静かになり、皆微妙な表情をしながら財布から札を出して、直接手渡された。言わなきゃ忘れたふりをされてたな。
自室で小谷野に渡された封筒を開けると、年賀状が入っていた。去年写真雑誌に掲載された入賞作の写真。網膜に焼き付けるほど見た写真なのに、口元が緩む。この写真に写っている、彼への想いをまだ持て余していた頃の自分は、今の自分を想像出来なかった。
『君と一緒にお酒が呑める日を楽しみにしてます』
まだ二年はあるだろ、と書き添えられた言葉にツッコミを入れたくなるけれど。それまで待っていてくれるということなのだろう。
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