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「一緒にいる時だからこそ、俺との時間を大事にして欲しいんだよ。なかなか二人きりになれないんだからさ。余所見されると寂しいじゃん」
不意打ちを食らって、一瞬呼吸の仕方を忘れた。耳が熱い。たぶん今、赤い顔してる。恥ずかしくなって崇史が目を逸らすと、赤く染まっているであろう耳に触れてきた。余計に熱くなるから、もうやめて欲しいのに。その指を払いのけることが出来ない。
小谷野の指先は耳の後ろを辿って、首の後ろを優しく撫でる。その手の仕草は、身構えようとしても崩れ落ちそうなくらい全身に力が入らなくなる。ずるい、ずるい。心の中で何度も唱えながら、その手に全てを委ねる。
「なんでそう、くすぐってくんの」
「もっと凄いことしたいってさっき自分で言ってたじゃん」
ふふっと笑い混じりに言う。
「そろそろデザートに、崇史が買ってきてくれたアイスクリームでも食べようか」
小谷野は二人分のドンブリを持って、さっさと台所へ行ってしまった。自分も、と思うのに立ち上がれない。
さっき触れられたところが、まだ熱い。自分で触れてみても何も感じないのに、彼に触れられた時だけ違う。なんでいつも弱いとこばっかり触るんだろう。悔しいような恥ずかしいような嬉しいような、変な感じ。でも、もっと触れられたい。
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