WISH LIST

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 新しい年の新しい朝に、最初に見るのが好きな人というのは、なかなか素晴らしいものじゃないのか。トースターの音で崇史がぼんやりと目を覚ますと、あけましておめでとう、とコタツの天板を台拭きで拭く小谷野が目に入った。  朝御飯には、雑煮は家で食べるだろうから、と言って焼いた餅の入ったおしるこが出てきた。 「餅は忘年会のビンゴで当てました。いっぱいあるからお代わりして良いよ。むしろ積極的に食べて減らして欲しい」 「なにそれ。先生たちってそんなことやってんの」 「先生だってみんなで呑みに行ったりとか、学校以外の場所では普通の生活をしてるんですよ」  なかなか冷めないおしるこを、二人して熱い息を吐きながらほおばる。 「……いつもは実家帰ってる時じゃないとちゃんとお正月らしいことなんてしないんだけどね」 「僕がいるから特別?」 「うん、特別」  生徒とか先生とか、大人とか子供とか。そういうカテゴライズから離れたところにある、ただ普通の生活。好きな人と一緒に時間をもっと長く過ごしたい。同じテーブルで食事をして、同じ部屋で眠る。愛とか恋とか運命とか、心拍数を上昇させるもの達の先にきっとそれはある。そんな穏やかさを早く手に入れたい。 「今年は雪降ると良いね」 「あー、雪景色撮りたいねえ」     
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