WISH LIST

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 それから。はい、どうぞ、と薄い封筒を手渡された。 「お年玉」 「まじで?」  崇史が中を開けようとすると、帰ってからにしなさいと制された。 「寄り道しないで真っ直ぐ帰るんだよ」  また先生みたいなこと言って。だけどこの部屋から一歩出たら、もう恋人同士ではない。年相応に何も知らない高校生に戻らなくてはいけない。二人でいる時間は全部何よりも本物だと思えるのに、それが今の自分の普段の生活に負けてしまうのが、ただただ悔しくて。信号を待っている間、アスファルトをスニーカーの底で蹴っていた。  一緒に冬眠したい。春になるまでぎゅっと抱き合ったまま眠り続けたい。それで目が覚めたら、何もかも許される世界になっていて欲しい。
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